~二十四節気とともに綴る京都の食卓~

うつりかわる季節を楽しみ、旬を味わう、京都人の美意識と知恵。四季のある日本で、京都の人たちはひときわ季節を大切にしてきました。古くから季節の指標として用いられてきた「二十四節気」を軸として、名店の料理とともに、京都の暮らしにとけこむ食の風景を綴ります。

2023/1/6~1/19[

寒の入り、
寒の恵み。

小寒の初日を寒の入りといい、節分までの1カ月ほどを寒の内といいます。
京都の底冷えが身にしみる時期であり、「寒じめ野菜」や「寒魚」と呼ばれる
冬の旬食材がいっそうおいしさを増す時期。さて、何から味わいましょうか。

2023/01/06

季節がもたらす、
豊かな「寒」。

寒の時期に汲んだ水は良質とされ、中でも寒の入りから9日目の「寒九の水」は薬になると尊ばれてきたほど。また、この日に降る「寒九の雨」は豊作の兆しだと信じられていました。そして、「寒造り」「寒仕込み」という言葉があるように、冷たく乾燥した空気によって雑菌の繁殖が抑えられるこの時期は、酒や味噌、醤油などの仕込みに適しています。季節を味方にする日本人の知恵。「寒」のつく言葉は他にもまだ見つかりますよ。

季めくり季の味■地階 京の銘店そう菜売場

〈天ぷら八坂圓堂〉

豊かな芳香を味わう、
春菊のかき揚げ。

寒さによって甘みや味わいが増す冬野菜。地温が低下すると、凍結しないように植物の防御作用が働き、細胞に糖が蓄積され、水分が減るからだと考えられています。鮮やかな緑のかき揚げは、冬の葉野菜の代表格である春菊。揚げるとパリパリと軽く、豊かな香りが広がり、ほのかな苦みが心地いいアクセントに。春菊は加熱時間が長いと苦みが強まりますが、一瞬の技でサッと揚げた天ぷらだと、苦みや特有のクセが抑えられ、うまみがぐっと引き立ちます。天つゆをつけても塩をつけてもおいしく、熱々のうどんや蕎麦など麵類のトッピングにも人気です。

〈天ぷら八坂圓堂〉

天ぷら各種(1個)
とうもろこし 税込216円
海老 税込259円
春菊のかきあげ 税込334円

〈京都𠮷兆〉
〈京都𠮷兆〉
〈京都𠮷兆〉
 
 
 

季節の恵みを味わい深く、
𠮷兆のオリーブオイルとだし。

寒い時期においしくなる野菜のひとつが蕪。根にあたる白い部分には消化酵素のアミラーゼやビタミンCが含まれ、葉の部分はβカロテンやカルシウムなども豊富に含みます。写真1枚目の料理は、京都𠮷兆の「エキストラヴァージン オリーブオイル」で蕪を炒め、「𠮷兆のだし」で取っただしでごはんを炊いた、焼き小蕪ごはん。まずは刻んだ金時人参、土生姜、うす揚げに米、だしを合わせ、酒、塩、醤油で味つけして炊きます。小蕪は厚めに皮をむいて1.5cm角に切り、軽く塩胡椒をし、オリーブオイルを敷いたフライパンで焼き目がつくように強火で炒め、刻んだ葉の軸も加えて、さらに炒めます。ごはんが炊けたら、炒めた蕪を混ぜて、できあがりです。写真2枚目は、蕪の皮と葉っぱのお漬物。刻んで塩をふり、お好みで昆布や一味を入れても美味です。京都𠮷兆の「エキストラヴァージン オリーブオイル」は日本の料理に合うように開発したもので、種を抜き取って抽出する製法により、えぐみや苦味がなく、繊細な味わい。「𠮷兆のだし」は本枯鰹節と羅臼昆布を原材料にした手軽なだしパック。どちらも食材の持ち味を引き立て、料理の味わいを深める名脇役です。

〈京都𠮷兆〉

𠮷兆のだし(だしパック5袋入)税込1,080円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら
エキストラヴァージン オリーブオイル(92g)税込1,620円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら

〈下鴨茶寮〉

白い湯気に包まれた
白い鱈と大根おろし。

漢字で魚へんに雪と書く鱈(たら)は、寒くなるほどおいしくなり、今の時期に獲れるものは寒鱈と呼ばれます。雪のように白い身は、淡泊でクセがなく、ほろりと柔らか。和洋中のどんな料理にも合いますが、なんといっても冬は鍋ものに欠かせません。こちらは、みぞれに見立てた大根おろしをたっぷりとのせた一人鍋です。みず菜、白菜、青ねぎといった今が旬の野菜をはじめ、お揚げや銀杏など、具だくさん。麦味噌風味のだしで煮込み、最後に別添えの大根おろしをのせればできあがりです。鱈は高たんぱくで脂質が少なく、大根おろしは消化を助ける働きがあり、体にも優しい味わい。湯気が立ちのぼる熱々のうちに、フーフーしながら、ぜひどうぞ。

〈下鴨茶寮〉

鱈とみぞれの料亭小鍋(1人前)税込1,512円
●1月11日(水)から販売

〈西利〉
〈西利〉
〈西利〉
 
 
 

■地階 漬物売場
透けるほどに薄く美しく、
繊細な味わいをもつ千枚漬。

京都の伝統野菜 聖護院かぶらを専用の鉋(かんな)で薄く削るように切り、丁寧に漬けこんだ千枚漬。江戸時代末期に御所の料理人が考案したのが始まりとされ、"京都三大漬物"のひとつに数えられます。従来の漬物のような長期保存を目的とせず、浅漬けならではの純白で美しい姿と上品な味わいをもつ、冬ならではの贅沢な逸品。繊細な歯ざわりとなめらかな舌ざわり、柔らかい甘みとほのかな酸味が口の中に広がります。今の季節は京都の伝統野菜 みぶ菜の漬物もおすすめで、シャキッとした食感やピリッと爽やかな香りは、千枚漬と好対照です。写真3枚目は、水気を切った千枚漬を広げ、みぶ菜やスモークサーモンを巻いたアレンジ例。生ハムや数の子を巻いても合い、食卓に凛と映えます。西利は1976年に千枚漬で総理大臣賞を受賞。その伝統の味を守り抜くとともに、瑞々しい「京のあっさり漬」、健康漬物「西利乳酸菌ラブレ」など、漬物の新しいスタイルや楽しみ方を次々と開拓し続けています。

〈西利〉

千枚漬(100g)税込794円
みぶ菜(130g)税込615円

  • ※本記事の内容はホームページ掲載時の情報です。
  • ※季節のメニューなど、商品により販売期間が限られていますので、ご了承ください。
  • ※やむを得ない事情により、食材の一部を変更する場合、予告なく価格変更、販売終了する場合がございます。
  • ※写真はいずれも盛り付け例です。皿などの容器は商品に含まれません。

2022年

[2022/2/4~2/18]

都大路に春一番が吹き、梅の花がほころび始めます。厳しい余寒が続く中にも、新しい季節の兆しはそこかしこに。

[2022/2/19~3/4]

雪が雨に変わる頃の意で雨水。北山の雪解け水が鴨川をうるおし、三寒四温を繰り返しながら、少しずつ春めいてきます。

けいちつ

[2022/3/5~3/20]

春の陽光に誘われ、冬ごもりしていた虫たちが動きだす。鴨川沿いの柳は鮮やかに芽吹き、早咲きの桜が花を開きはじめます。

しゅんぶん

[2022/3/21~4/4]

沈丁花の香りが漂い、椿や木蓮、雪柳、桜…と次々に咲き、つばめが飛来しはじめ、いよいよ本格的な春の到来です。

せいめい

[2022/4/5~4/19]

清らかな陽光にみちて、生きとし生けるものすべてがいきいきと生命を謳歌する季節。京都の街は桜色に染まります。

こく

[2022/4/20~5/4]

百穀春雨と呼ばれる恵みの雨がしっとりと大地に降りそそぐ頃。藤や石楠花、杜若が見頃を迎え、街路樹は瑞々しい若緑色へ。

りっ

[2022/5/5~5/20]

爽やかな青空が広がり、青もみじが目に眩しく、風薫る五月。納涼床、川床が始まり、夏日となる日も次第に多くなります。

しょうまん

[2022/5/21~6/5]

草木や枝葉が生い茂り、梅の実がふくらむ頃。衣替えや建具替えをすると、町並みも夏らしい装いに。

ぼうしゅ

[2022/6/6~6/20]

梅雨入りを迎え、雨に濡れた色とりどりの紫陽花が美しい頃。各地の寺社で田植祭や竹伐り会式など豊作を願う神事が行われます。

[2022/6/21~7/6]

都大路をしとしとと雨が濡らす頃。神社では夏越祓の神事が行われ、鉾町にお囃子の音色が響きだし、京都の夏はいよいよ本番へ。

[2022/7/7~7/22]

コンチキチンの音色が響き、夏の暑さはいよいよ盛り。3年ぶりの山鉾巡行が待ち遠しく例年にも増して町が活気づきます。

[2022/7/23~8/6]

朝早くから蝉が大合唱し、空には大きな入道雲が立ちのぼり、京の油照りと言われる盆地特有の蒸し暑さが続きます。

[2022/8/7~8/22]

じっとりとした残暑が続く毎日。万灯会や灯篭流しが行われ、五山の送り火を終えると、京都の街はようやく秋の気配に。

[2022/8/23~9/7]

赤とんぼの姿、鈴虫の声。山々の緑は濃くなり、夏の入道雲と秋の鰯雲が混じり合う、行き合いの空が見られる頃です。

[2022/9/8~9/22]

朝晩は日ごとに涼しさが増し、草花が白い朝露をむすぶ頃。萩の花がしだれ咲き、夜空には美しい月が輝きます。

[2022/9/23~10/7]

暑さ寒さも彼岸まで。肌に心地いい秋風が金木犀の甘い香りを漂わせ、色鮮やかな彼岸花を揺らします。

[2022/10/8~10/22]

すすきの穂が黄金色に輝き、菊の花は色とりどりに。秋の日暮れは釣瓶落とし、そろそろ燗酒が恋しくなります。

[2022/10/23~11/6]

ひんやりと風が冷たく、朝晩は吐く息が白くなり始める頃。山野は晩秋の色を帯び、菊の花は見頃を迎えます。

[2022/11/7~11/21]

街のあちらこちらでお火焚きの煙が立ち昇る頃。山々や街路樹が次々と色づき、京都に美しい緋色が広がります。

[2022/11/22~12/6]

山茶花が花開き、鴨川にはユリカモメが飛来。しぐれるごとに寒さが増し、いよいよ本格的な冬の到来です。

[2022/12/7~12/21]

南座のまねき看板が上がると、京都の街は師走のにぎわいに。寺社では大根焚きや煤払い、終い縁日が行われます。

[2022/12/22~2023/1/5]

陰が極まり陽となる冬至。「ん」のつくもんで気を転じ、をけら詣りに除夜の鐘、歳神様をお迎えします。

[2023/1/6~1/19]

風花が静かに散らつき、寒椿が冬景色に彩りを添える頃。初釜式や十日ゑびすに向かう人波でまちが華やぎます。

[2023/1/20~2/3]

雪中四友と呼ばれる花々が咲き、寒さの底、来る春の兆し。初弘法、初天神、初不動、そして節分行事で寺社が賑わいます。

2021年

[2021/4/4~4/19]

清浄明潔を略して清明。清らかな陽光を受けて草木が芽生え、万物がいきいきと生命を謳歌し、都大路は桜色に染まります。

[2021/4/20~5/4]

穀物の種を蒔き、春雨に生育の願いを託す穀雨。八十八夜、茶摘みの季節が始まり、京都の街は桜色から瑞々しい緑色に。

[2021/5/5~5/20]

木々の緑がまぶしく、暦の上では夏。納涼床、川床が始まり、そして行列は中止ですが、五月といえば平安の時代から続く葵祭です。

[2021/5/21~6/4]

日差しが強くなり、木々の緑は深く。京都には〝家の作りようは夏を旨とすべし〟と涼の知恵が息づき、町家では6月1日に建具替えをします。

[2021/6/5~6/20]

芒(のぎ)はイネ科植物の突起のこと。麦を刈り取り、田植えをする時期です。京都のそこかしこで紫陽花が美しく、夕闇を舞う蛍が夏の風情を運びます。

[2021/6/21~7/6]

東山が雨にけむり、梅雨まっただ中。630日、京都各地の神社では夏越祓(なごしのはらえ)を行い、残る半年の無病息災を祈願します。

[2021/7/7~7/21]

疫病や災厄の退散を祈願して平安時代に始まったとされる祇園祭。おごそかに神事が行われ、京都の厳しい暑さは盛りを迎えます。

[2021/7/22~8/6]

三方を山に囲まれ、夏の暑さが厳しい京都盆地。鴨川の飛び石に子供たちの歓声が響き、堤防に草いきれが立ち込めます。

[2021/8/7~8/22]

盆地特有の残暑が続く日々。おしょらいさんをお迎えし、五山の送り火が終わると、ようやく秋の気配が漂いはじめます。

[2021/8/23~9/6]

ようやく暑さが少し和らぎ、虫の音も聞こえはじめる頃。8月下旬の京都では町内の路地で地蔵盆が繰り広げられます。

[2021/9/7~9/22]

草花に朝露が白く光り、虫の声が夕暮れをつつむ頃。京都の各所で秋の名月を愛でる風雅な祭事が行われます。

[2021/9/23~10/7]

ひんやりと頬をなでる風、どこからか漂ってくる金木犀の香り。秋分を境に日が短くなり、秋の夜長の始まりです。

[2021/10/8~10/22]

朝夕は肌寒く草木に露が降りる頃。天高く澄みわたり、遠く比叡山や愛宕山の姿も冴え、夜空には月がくっきりと輝きます。

[2021/10/23~11/6]

露は霜へと変わり、風は冷たく、いちだんと秋が深まる頃。秋の特別拝観や秋祭りで京都の街はにぎわいを増します。

[2021/11/7~11/21]

暦の上では冬が始まり、火の温もりが恋しくなる頃。京都は至るところで紅葉が広がり、美しい緋色に染まります。

[2021/11/22~12/6]

街に落葉が舞い、北山に初雪が舞い始める時期。南座に顔見世のまねきが上がると、いよいよ京都の町は師走の様相に。

[2021/12/7~12/21]

京都盆地に比叡おろしが吹き、大根焚きの湯気が上がり、パタパタと煤払いの音が聞こえると、正月準備を始める頃です。

[2021/12/22~2022/1/4]

一陽来復とも称される冬至。新年がよい年となるよう願い、しめ縄や松を飾り、鏡餅を供え、歳神さまを迎える準備をします。

[2022/1/5~1/19]

寒の入りといわれ、京都の底冷えが身にしみる時期。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも落ち着いてきます。

[2022/1/20~2/3]

二十四節気の締めくくり。一年の邪気を祓い、心新たに春を迎えるために、各地の寺社で節分行事が営まれます。

番外編

[〜番外編~]

祭礼や年中行事などの日をハレ(晴)、普段の日をケ(褻)とし、非日常と日常を使い分ける文化が京都の暮らしに息づいています。

[〜番外編~]

相性のいい旬の食材の組み合わせを出合いもんと言います。季節、食材、人と人、調和を尊ぶ京都らしい美意識がここに。