~二十四節気とともに綴る京都の食卓~

うつりかわる季節を楽しみ、旬を味わう、京都人の美意識と知恵。四季のある日本で、京都の人たちはひときわ季節を大切にしてきました。古くから季節の指標として用いられてきた「二十四節気」を軸として、名店の料理とともに、京都の暮らしにとけこむ食の風景を綴ります。

2022/11/22~12/6[

冬だより、
旬だより。

季節の訪れとともに無性に恋しくなる食べものがあります。
旬の食材にはその時期に必要とされる栄養素も多く、理にかなっているのかもしれません。
いよいよ底冷えへと向かう京都。おいしく味わって健やかな毎日を。

2022/11/18

昔も今も京都の底冷え。

底冷えと形容される京都の冬。夏目漱石の日記にも「京都ノfirst impression(第一印象)寒イ」という言葉が残されています。気象台の統計によると、最低気温が0℃を下回る冬日が、明治時代の京都では100日を超える年が珍しくなく、最近10年ほどの平均は20日弱。しかし、山に囲まれた盆地の地形によって冷気が逃げにくく、また、湿度が低いせいで体から蒸散する水分が多く、体感温度が低いのは今も同じなのかもしれません。

季めくり季の味■地階 京の銘店そう菜売場

〈下鴨茶寮〉

淡雪のような柔らかさ。
冬の風物詩、かぶら蒸し。

すりおろした蕪(かぶ)に卵白を混ぜて、具材とともに蒸し、とろみのある葛あんをかけた、かぶら蒸し。蕪は薬膳の世界でも"温性"の食材に分類されているなど、体を温める野菜として知られ、底冷えする京都の風土が生んだ料理です。すりおろすことで蕪の甘みや香りが引き立ち、蒸してふわっとした食感が格別。中には鯛やよもぎ麩、上には海老や小豆、しめじ、人参などを散りばめ、彩りも華やかに仕上げました。料亭ならではの上品なだしの風味を生かした葛あんがとろ~りと包み込みます。京都の冬に欠かせない風物詩のひとつとして、温めて召し上がってください。

〈下鴨茶寮〉

かぶら蒸し(1人前)税込864円
●11月23日(水・祝)から販売

〈京都𠮷兆〉
〈京都𠮷兆〉
 
 
 

土佐酢のほのかな酸味で、
ひと味違う、かぶら蒸しに。

こちらは京都𠮷兆の「土佐酢」を葛あんに用いた、かぶら蒸しの調理例です。甘鯛は切って塩をして1時間ほど置いてからフライパンで焼き、百合根、れんこん、ブロッコリーは小さめの一口大に切って塩ゆでに。蕪(かぶ)はすりおろして水気を切り、千切りしたきくらげ、泡立てた卵白、塩少々と混ぜ合わせておきます。器に具材を盛り、上に蕪のすりおろしをのせ、10分ほど蒸すか、電子レンジで加熱し、出た汁は捨てます。鍋で温めた「土佐酢」に葛または片栗粉でとろみをつけ、蕪の上にかけて、わさびを留めて完成です。京都𠮷兆の「土佐酢」は、鰹節と昆布をふんだんに使っただしに、京都老舗の醸造酢や兵庫たつ野の醤油などで調味した、柔らかな酸味と豊かなうまみが特長。嵐山本店で使用している味わいをご家庭用に再現しました。魚、肉・野菜など、どんな食材とも相性がよく、酢のものや和えものはもちろん、焼き魚や炒めものにもおすすめの万能調味料です。

〈京都𠮷兆〉

土佐酢(195ml)税込1,080円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら

〈天ぷら八坂圓堂〉

早どりした愛らしい
金時にんじん、京かんざし。

ほっそり細長く、鮮やかな紅色。金時にんじんを早どりしたものです。金時にんじんといえば、お雑煮やおせちの食材としておなじみですが、お正月以外にも幅広く活用してもらえるようにと京都府農林水産技術センターが研究を重ね、2009年に京野菜の新品目として京かんざしがデビュー。舞妓さんのかんざしのように愛らしいことから、その名がつけられました。重さは1本15g前後と普通のにんじんの1/10程度。クセがなく柔らかく、生のままサラダや野菜スティックにできるほどですが、油との相性も抜群。揚げることで風味や香りが引き立ち、美容や健康の味方として知られる成分リコピンの吸収率が高まるという利点もあります。京都らしい食材をふんだんに、季節の移り変わりを繊細に映しだす圓堂。定番人気のとうもろこしや海老しそ巻きとともにどうぞ。

〈天ぷら八坂圓堂〉

天ぷら各種(1個)
とうもろこし、海老しそ巻き 各税込194円
京かんざし 税込340円

〈二傳〉

脂がのった"紅葉鯛"を
ふっくらと、あら炊きに。

鯛には旬が2回あるとされ、春に漁獲される産卵前は"桜鯛"、そして今の時期は"紅葉鯛"と呼ばれます。鯛は初夏に産卵を終えると食欲が旺盛になるうえに、夏場は餌となる海老や蟹など甲殻類も活発に動くため、栄養をたっぷり蓄えて、秋には肥えて丸々と。また、海老や蟹にはアスタキサンチンという赤い色素が豊富に含まれているので、それを大量に食べた鯛の体表にも同じ色素が蓄積され、まさに紅葉のように赤みが増します。"紅葉鯛"のおいしさを余すことなく味わいつくす、あら炊き。酒、砂糖、味醂、醤油でふっくら柔らかく炊きあげ、里芋や紅葉麩の炊き合わせも添えました。

〈二傳〉

惣菜など各種
[2種]税込1,080円から
[3種]税込1,620円から
[4種]税込2,160円から
鯛のあら炊き(1人前)税込540円相当
※2パック以上での販売のため、単品販売はしておりません。

〈福寿園〉

■地階 銘茶売場
ゆずの香りにほっと一息、
季節の和風ブレンドティー。

1790年に創業し、伝統の"茶の心"を受け継ぐとともに、茶=C・H・A(Culture文化、Health健康、Amenity快適)として新たなティーライフを創造する、福寿園。国産の柚子(ゆず)の果皮をブレンドした、季節限定の緑茶です。茶葉は福寿園のブレンダーが厳選した、かぶせ茶を使用。かぶせ茶とは、茶を摘む7~10日前頃から覆いをかけて直射日光を遮る被覆(ひふく)栽培をしたものです。茶葉に含まれるうまみや甘みのもとテアニンは、日光を浴びることで苦みや渋みをもつカテキンへと変化するため、日光の浴び具合によって、うまみ・甘み・苦み・渋みのバランスが異なってきます。玉露は20〜30日ほど被覆栽培をした、うまみと甘みの強い緑茶。煎茶は被覆せずに栽培した、ほどよい渋みとすっきり感をもつ緑茶。かぶせ茶はその中間的な味わいをもち、いわば玉露と煎茶のいいトコ取りとも言われます。渋みが少なく、まろやかな緑茶のうまみに、柚子のほのかな香りと甘酸っぱい風味が調和した、ゆず緑茶。手軽なティーバッグなので、熱湯を注いで約1分半でおいしく味わえます。

〈福寿園〉

ゆず緑茶(ティーバッグ、3g×10)税込918円

  • ※本記事の内容はホームページ掲載時の情報です。
  • ※季節のメニューなど、商品により販売期間が限られていますので、ご了承ください。
  • ※やむを得ない事情により、食材の一部を変更する場合、予告なく価格変更、販売終了する場合がございます。
  • ※写真はいずれも盛り付け例です。皿などの容器は商品に含まれません。

2022年

[2022/2/4~2/18]

都大路に春一番が吹き、梅の花がほころび始めます。厳しい余寒が続く中にも、新しい季節の兆しはそこかしこに。

[2022/2/19~3/4]

雪が雨に変わる頃の意で雨水。北山の雪解け水が鴨川をうるおし、三寒四温を繰り返しながら、少しずつ春めいてきます。

けいちつ

[2022/3/5~3/20]

春の陽光に誘われ、冬ごもりしていた虫たちが動きだす。鴨川沿いの柳は鮮やかに芽吹き、早咲きの桜が花を開きはじめます。

しゅんぶん

[2022/3/21~4/4]

沈丁花の香りが漂い、椿や木蓮、雪柳、桜…と次々に咲き、つばめが飛来しはじめ、いよいよ本格的な春の到来です。

せいめい

[2022/4/5~4/19]

清らかな陽光にみちて、生きとし生けるものすべてがいきいきと生命を謳歌する季節。京都の街は桜色に染まります。

こく

[2022/4/20~5/4]

百穀春雨と呼ばれる恵みの雨がしっとりと大地に降りそそぐ頃。藤や石楠花、杜若が見頃を迎え、街路樹は瑞々しい若緑色へ。

りっ

[2022/5/5~5/20]

爽やかな青空が広がり、青もみじが目に眩しく、風薫る五月。納涼床、川床が始まり、夏日となる日も次第に多くなります。

しょうまん

[2022/5/21~6/5]

草木や枝葉が生い茂り、梅の実がふくらむ頃。衣替えや建具替えをすると、町並みも夏らしい装いに。

ぼうしゅ

[2022/6/6~6/20]

梅雨入りを迎え、雨に濡れた色とりどりの紫陽花が美しい頃。各地の寺社で田植祭や竹伐り会式など豊作を願う神事が行われます。

[2022/6/21~7/6]

都大路をしとしとと雨が濡らす頃。神社では夏越祓の神事が行われ、鉾町にお囃子の音色が響きだし、京都の夏はいよいよ本番へ。

[2022/7/7~7/22]

コンチキチンの音色が響き、夏の暑さはいよいよ盛り。3年ぶりの山鉾巡行が待ち遠しく例年にも増して町が活気づきます。

[2022/7/23~8/6]

朝早くから蝉が大合唱し、空には大きな入道雲が立ちのぼり、京の油照りと言われる盆地特有の蒸し暑さが続きます。

[2022/8/7~8/22]

じっとりとした残暑が続く毎日。万灯会や灯篭流しが行われ、五山の送り火を終えると、京都の街はようやく秋の気配に。

[2022/8/23~9/7]

赤とんぼの姿、鈴虫の声。山々の緑は濃くなり、夏の入道雲と秋の鰯雲が混じり合う、行き合いの空が見られる頃です。

[2022/9/8~9/22]

朝晩は日ごとに涼しさが増し、草花が白い朝露をむすぶ頃。萩の花がしだれ咲き、夜空には美しい月が輝きます。

[2022/9/23~10/7]

暑さ寒さも彼岸まで。肌に心地いい秋風が金木犀の甘い香りを漂わせ、色鮮やかな彼岸花を揺らします。

[2022/10/8~10/22]

すすきの穂が黄金色に輝き、菊の花は色とりどりに。秋の日暮れは釣瓶落とし、そろそろ燗酒が恋しくなります。

[2022/10/23~11/6]

ひんやりと風が冷たく、朝晩は吐く息が白くなり始める頃。山野は晩秋の色を帯び、菊の花は見頃を迎えます。

[2022/11/7~11/21]

街のあちらこちらでお火焚きの煙が立ち昇る頃。山々や街路樹が次々と色づき、京都に美しい緋色が広がります。

[2022/11/22~12/6]

山茶花が花開き、鴨川にはユリカモメが飛来。しぐれるごとに寒さが増し、いよいよ本格的な冬の到来です。

[2022/12/7~12/21]

南座のまねき看板が上がると、京都の街は師走のにぎわいに。寺社では大根焚きや煤払い、終い縁日が行われます。

[2022/12/22~2023/1/5]

陰が極まり陽となる冬至。「ん」のつくもんで気を転じ、をけら詣りに除夜の鐘、歳神様をお迎えします。

[2023/1/6~1/19]

風花が静かに散らつき、寒椿が冬景色に彩りを添える頃。初釜式や十日ゑびすに向かう人波でまちが華やぎます。

[2023/1/20~2/3]

雪中四友と呼ばれる花々が咲き、寒さの底、来る春の兆し。初弘法、初天神、初不動、そして節分行事で寺社が賑わいます。

2021年

[2021/4/4~4/19]

清浄明潔を略して清明。清らかな陽光を受けて草木が芽生え、万物がいきいきと生命を謳歌し、都大路は桜色に染まります。

[2021/4/20~5/4]

穀物の種を蒔き、春雨に生育の願いを託す穀雨。八十八夜、茶摘みの季節が始まり、京都の街は桜色から瑞々しい緑色に。

[2021/5/5~5/20]

木々の緑がまぶしく、暦の上では夏。納涼床、川床が始まり、そして行列は中止ですが、五月といえば平安の時代から続く葵祭です。

[2021/5/21~6/4]

日差しが強くなり、木々の緑は深く。京都には〝家の作りようは夏を旨とすべし〟と涼の知恵が息づき、町家では6月1日に建具替えをします。

[2021/6/5~6/20]

芒(のぎ)はイネ科植物の突起のこと。麦を刈り取り、田植えをする時期です。京都のそこかしこで紫陽花が美しく、夕闇を舞う蛍が夏の風情を運びます。

[2021/6/21~7/6]

東山が雨にけむり、梅雨まっただ中。630日、京都各地の神社では夏越祓(なごしのはらえ)を行い、残る半年の無病息災を祈願します。

[2021/7/7~7/21]

疫病や災厄の退散を祈願して平安時代に始まったとされる祇園祭。おごそかに神事が行われ、京都の厳しい暑さは盛りを迎えます。

[2021/7/22~8/6]

三方を山に囲まれ、夏の暑さが厳しい京都盆地。鴨川の飛び石に子供たちの歓声が響き、堤防に草いきれが立ち込めます。

[2021/8/7~8/22]

盆地特有の残暑が続く日々。おしょらいさんをお迎えし、五山の送り火が終わると、ようやく秋の気配が漂いはじめます。

[2021/8/23~9/6]

ようやく暑さが少し和らぎ、虫の音も聞こえはじめる頃。8月下旬の京都では町内の路地で地蔵盆が繰り広げられます。

[2021/9/7~9/22]

草花に朝露が白く光り、虫の声が夕暮れをつつむ頃。京都の各所で秋の名月を愛でる風雅な祭事が行われます。

[2021/9/23~10/7]

ひんやりと頬をなでる風、どこからか漂ってくる金木犀の香り。秋分を境に日が短くなり、秋の夜長の始まりです。

[2021/10/8~10/22]

朝夕は肌寒く草木に露が降りる頃。天高く澄みわたり、遠く比叡山や愛宕山の姿も冴え、夜空には月がくっきりと輝きます。

[2021/10/23~11/6]

露は霜へと変わり、風は冷たく、いちだんと秋が深まる頃。秋の特別拝観や秋祭りで京都の街はにぎわいを増します。

[2021/11/7~11/21]

暦の上では冬が始まり、火の温もりが恋しくなる頃。京都は至るところで紅葉が広がり、美しい緋色に染まります。

[2021/11/22~12/6]

街に落葉が舞い、北山に初雪が舞い始める時期。南座に顔見世のまねきが上がると、いよいよ京都の町は師走の様相に。

[2021/12/7~12/21]

京都盆地に比叡おろしが吹き、大根焚きの湯気が上がり、パタパタと煤払いの音が聞こえると、正月準備を始める頃です。

[2021/12/22~2022/1/4]

一陽来復とも称される冬至。新年がよい年となるよう願い、しめ縄や松を飾り、鏡餅を供え、歳神さまを迎える準備をします。

[2022/1/5~1/19]

寒の入りといわれ、京都の底冷えが身にしみる時期。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも落ち着いてきます。

[2022/1/20~2/3]

二十四節気の締めくくり。一年の邪気を祓い、心新たに春を迎えるために、各地の寺社で節分行事が営まれます。

番外編

[〜番外編~]

祭礼や年中行事などの日をハレ(晴)、普段の日をケ(褻)とし、非日常と日常を使い分ける文化が京都の暮らしに息づいています。

[〜番外編~]

相性のいい旬の食材の組み合わせを出合いもんと言います。季節、食材、人と人、調和を尊ぶ京都らしい美意識がここに。