~二十四節気とともに綴る京都の食卓~

うつりかわる季節を楽しみ、旬を味わう、京都人の美意識と知恵。四季のある日本で、京都の人たちはひときわ季節を大切にしてきました。古くから季節の指標として用いられてきた「二十四節気」を軸として、名店の料理とともに、京都の暮らしにとけこむ食の風景を綴ります。

2022/9/8~9/22[

中秋の名月、
芋名月。

9月10日(土)は中秋の名月、十五夜です。
秋の収穫期にあたり、豊穣に感謝をこめて、里芋などを供える風習があることから「芋名月」とも呼びます。
月を愛で、月見酒を酌み交わしながら、秋の実りを味わいましょう。

2022/09/02

二夜の月を愛でる。

空の透明度が増す秋は、月がひときわ美しく見えます。旧暦8月15日の「十五夜」と旧暦9月13日の「十三夜」を合わせて「二夜(ふたよ)の月」といい、日本では古くから2度のお月見をする習慣がありました。また、十五夜に雨が降ることを「雨月(うげつ)」、雲に月が隠れていることを「無月(むげつ)」と呼び、見えない月さえも愛でようとする日本人の豊かな情緒を感じます。今年はどんなお月様が見られるでしょうか。

季めくり季の味■地階 京の銘店そう菜売場

〈下鴨茶寮〉

白味噌と柚子の香りが包む
里芋の甘美な味わい。

柔らかく煮た里芋に、白味噌のまろやかな甘み、柚子の清々しい香りがとけあう一品です。里芋は稲作が始まる以前の縄文中期にすでに栽培されていて、お米が主食になる前は里芋が主食だったという説もあります。中秋の名月に里芋を供える風習があるのは、大切な食べ物だったことを物語っているのかもしれません。また、こっくりと甘口の白味噌は、平安時代に京都で生まれ、当時は主に貴族の間で食されていた贅沢な嗜好品だったそう。古くからの食文化が豊かに結びついた京都らしい味わいが十五夜を風流に彩ります。

〈下鴨茶寮〉

里芋のゆず白味噌仕立て(100g)税込486円

〈京都𠮷兆〉
〈京都𠮷兆〉
 
 
 

シンプルな味つけにして
味わい深い、月見の酒肴。

芋名月にちなみ、京都𠮷兆の調味料類を使った、里芋と赤ずいきの調理例をご紹介。ずいきは里芋の葉柄で、京都人にはなじみ深い食材であり、十五夜のお供えにもされます。調理に使用する「柚子もろみ」は大豆や大麦を発酵させた醤油もろみに柚子皮を加えた、とろりと濃厚な味わい。「土佐酢」は豊かなだしの風味とまろやかな酸味が特徴。「エキストラヴァージン オリーブオイル」は種を抜き取って抽出する製法により、えぐみや苦味がなく、和食にもよく合います。料理の1品目は、里芋もろみ。里芋は輪切りにして流水にさらしてから薄塩をし、フライパンで焼き目がついて串が通るまで焼き、器に盛って、揚げた銀杏、柚子もろみを添えます。2品目は、赤ずいきのお浸し。皮をむいた赤ずいきを水につけた後、落とし蓋をして酢を入れた湯で茹で、箸で持って曲がる程度になれば氷水へ。水を切り、包丁で1cm幅に割き、3~4cmの長さにし、塩少々とともに鍋に入れ、混ぜながら水分を飛ばします。ボウルなどの容器に冷ました赤ずいきと鷹の爪を入れ、土佐酢をヒタヒタに。時間を置いて発色したら、器に盛り、煎り胡麻とオリーブオイルをかけます。

〈京都𠮷兆〉

柚子もろみ(120g)税込864円
土佐酢(195ml)税込1,080円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら
エキストラヴァージン オリーブオイル(92g)税込1,620円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら

〈天ぷら八坂圓堂〉

ほくほく甘い芋名月に、
だしの利いた芋名月も。

芋名月にちなんだ、今が旬のさつまいもの天ぷら。さつまいもは別名を"甘藷(かんしょ=甘みのある芋の意)"と言いますが、生では甘みがなく、じっくりと熱を加えることによって、でんぷんが糊化して麦芽糖を生成し、甘くほくほくした仕上がりに。厚みがあり、表面はさくっと香ばしく、中は柔らかく、まろやかな甘みが口の中に広がります。ま〜るいお月様のような天ぷらは、だし巻きに海苔を巻いたもの。だしをふんだんに使った、贅沢な風味となめらかな舌ざわりです。

〈天ぷら八坂圓堂〉

天ぷら各種(1個)
海老しそ巻き 税込194円
さつまいも、だし巻き 各税込216円

〈二傳〉

さつまいもの甘みに
ぷりっとした海老が好相性。

ほくほく食感のさつまいものスライスに、開いた海老と大葉をはさんだ天ぷらです。写真は1個を一口大に切り分けた盛りつけ例。厚めに切ったさつまいもに、海老を1尾まるごと使っているので、満足感があり、彩りもよく、食卓にもう一品欲しいときに、ちょうどいい名脇役です。さつまいもの優しい甘み、海老のうまみ、青じその香味が一体となった、素朴にして奥行きのある味わい。

〈二傳〉

さつまいものはさみ揚げ(1個)税込270円

〈いづう〉

細部まで手をかけた、
風格ある姿の太巻き寿司。

空に浮かぶ満月のように円く大きく美しい太巻き寿司。玉子は白身魚のすり身を入れて、ふっくらと厚焼きに。干瓢(かんぴょう)はだしと砂糖で炊いて白く仕上げ、肉厚の椎茸はだしと醤油、みりんで甘辛く。三つ葉は風味と歯ごたえを生かしてシャキッと。手間を惜しまず各々の具材を丁寧に調理し、香り高い焼海苔と生海苔を2枚重ねて贅沢に巻きあげました。一見飾らない寿司だけに、ひとつひとつの具材とその調和を大事にし、どこまでも完成度を追求しています。

〈いづう〉

太巻き寿司(4貫)税込1,540円
(1本、8貫)税込3,024円

〈亀屋良長〉

■地階 和菓子売場
200年以上も愛され続けている
丸く美しい漆黒の烏羽玉。

ひと味ちがうお月見のおともに、まんまるで艶々と美しいお菓子、烏羽玉(うばたま)はいかがでしょうか。黒糖を使ったこし餡を丸めて、寒天でコーティングし、芥子(けし)の実をかけたもので、亀屋良長が創業以来200年以上に渡って作り続けている銘菓です。口にすると、ぷるんと薄くかかった寒天の中から、濃厚な黒糖の風味と甘みが広がり、プチプチとした芥子の実がアクセントに。黒糖は香り、酸味、甘みのバランスがいいことから、沖縄県八重山諸島にある日本最南端の有人島 波照間島(はてるまじま)産を使用しています。丸く黒い姿は檜扇(ひおうぎ)という植物の実がモチーフ。檜扇といえば、京都では厄除けの花として祇園祭のときに生けることで知られていますが、秋になると黒い実をつけます。その実が"ぬばたま"と呼ばれていて、亀屋良長では黒を表す美称"烏羽"の字を当てて、烏羽玉と命名しました。1803年に四条醒ヶ井に創業した亀屋良長。良質の水が湧き出るその地で、伝統を大切に守り続ける一方、和菓子の枠にとどまらない自由な商品開発にも取り組み、近年はパンにのせて焼くと餡バタートーストができる"スライスようかん"が話題を集めています。

〈亀屋良長〉

烏羽玉(6個)税込540円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら

  • ※本記事の内容はホームページ掲載時の情報です。
  • ※季節のメニューなど、商品により販売期間が限られていますので、ご了承ください。
  • ※やむを得ない事情により、食材の一部を変更する場合、予告なく価格変更、販売終了する場合がございます。
  • ※写真はいずれも盛り付け例です。皿などの容器は商品に含まれません。

2022年

[2022/2/4~2/18]

都大路に春一番が吹き、梅の花がほころび始めます。厳しい余寒が続く中にも、新しい季節の兆しはそこかしこに。

[2022/2/19~3/4]

雪が雨に変わる頃の意で雨水。北山の雪解け水が鴨川をうるおし、三寒四温を繰り返しながら、少しずつ春めいてきます。

けいちつ

[2022/3/5~3/20]

春の陽光に誘われ、冬ごもりしていた虫たちが動きだす。鴨川沿いの柳は鮮やかに芽吹き、早咲きの桜が花を開きはじめます。

しゅんぶん

[2022/3/21~4/4]

沈丁花の香りが漂い、椿や木蓮、雪柳、桜…と次々に咲き、つばめが飛来しはじめ、いよいよ本格的な春の到来です。

せいめい

[2022/4/5~4/19]

清らかな陽光にみちて、生きとし生けるものすべてがいきいきと生命を謳歌する季節。京都の街は桜色に染まります。

こく

[2022/4/20~5/4]

百穀春雨と呼ばれる恵みの雨がしっとりと大地に降りそそぐ頃。藤や石楠花、杜若が見頃を迎え、街路樹は瑞々しい若緑色へ。

りっ

[2022/5/5~5/20]

爽やかな青空が広がり、青もみじが目に眩しく、風薫る五月。納涼床、川床が始まり、夏日となる日も次第に多くなります。

しょうまん

[2022/5/21~6/5]

草木や枝葉が生い茂り、梅の実がふくらむ頃。衣替えや建具替えをすると、町並みも夏らしい装いに。

ぼうしゅ

[2022/6/6~6/20]

梅雨入りを迎え、雨に濡れた色とりどりの紫陽花が美しい頃。各地の寺社で田植祭や竹伐り会式など豊作を願う神事が行われます。

[2022/6/21~7/6]

都大路をしとしとと雨が濡らす頃。神社では夏越祓の神事が行われ、鉾町にお囃子の音色が響きだし、京都の夏はいよいよ本番へ。

[2022/7/7~7/22]

コンチキチンの音色が響き、夏の暑さはいよいよ盛り。3年ぶりの山鉾巡行が待ち遠しく例年にも増して町が活気づきます。

[2022/7/23~8/6]

朝早くから蝉が大合唱し、空には大きな入道雲が立ちのぼり、京の油照りと言われる盆地特有の蒸し暑さが続きます。

[2022/8/7~8/22]

じっとりとした残暑が続く毎日。万灯会や灯篭流しが行われ、五山の送り火を終えると、京都の街はようやく秋の気配に。

[2022/8/23~9/7]

赤とんぼの姿、鈴虫の声。山々の緑は濃くなり、夏の入道雲と秋の鰯雲が混じり合う、行き合いの空が見られる頃です。

[2022/9/8~9/22]

朝晩は日ごとに涼しさが増し、草花が白い朝露をむすぶ頃。萩の花がしだれ咲き、夜空には美しい月が輝きます。

[2022/9/23~10/7]

暑さ寒さも彼岸まで。肌に心地いい秋風が金木犀の甘い香りを漂わせ、色鮮やかな彼岸花を揺らします。

[2022/10/8~10/22]

すすきの穂が黄金色に輝き、菊の花は色とりどりに。秋の日暮れは釣瓶落とし、そろそろ燗酒が恋しくなります。

[2022/10/23~11/6]

ひんやりと風が冷たく、朝晩は吐く息が白くなり始める頃。山野は晩秋の色を帯び、菊の花は見頃を迎えます。

[2022/11/7~11/21]

街のあちらこちらでお火焚きの煙が立ち昇る頃。山々や街路樹が次々と色づき、京都に美しい緋色が広がります。

[2022/11/22~12/6]

山茶花が花開き、鴨川にはユリカモメが飛来。しぐれるごとに寒さが増し、いよいよ本格的な冬の到来です。

[2022/12/7~12/21]

南座のまねき看板が上がると、京都の街は師走のにぎわいに。寺社では大根焚きや煤払い、終い縁日が行われます。

[2022/12/22~2023/1/5]

陰が極まり陽となる冬至。「ん」のつくもんで気を転じ、をけら詣りに除夜の鐘、歳神様をお迎えします。

[2023/1/6~1/19]

風花が静かに散らつき、寒椿が冬景色に彩りを添える頃。初釜式や十日ゑびすに向かう人波でまちが華やぎます。

[2023/1/20~2/3]

雪中四友と呼ばれる花々が咲き、寒さの底、来る春の兆し。初弘法、初天神、初不動、そして節分行事で寺社が賑わいます。

2021年

[2021/4/4~4/19]

清浄明潔を略して清明。清らかな陽光を受けて草木が芽生え、万物がいきいきと生命を謳歌し、都大路は桜色に染まります。

[2021/4/20~5/4]

穀物の種を蒔き、春雨に生育の願いを託す穀雨。八十八夜、茶摘みの季節が始まり、京都の街は桜色から瑞々しい緑色に。

[2021/5/5~5/20]

木々の緑がまぶしく、暦の上では夏。納涼床、川床が始まり、そして行列は中止ですが、五月といえば平安の時代から続く葵祭です。

[2021/5/21~6/4]

日差しが強くなり、木々の緑は深く。京都には〝家の作りようは夏を旨とすべし〟と涼の知恵が息づき、町家では6月1日に建具替えをします。

[2021/6/5~6/20]

芒(のぎ)はイネ科植物の突起のこと。麦を刈り取り、田植えをする時期です。京都のそこかしこで紫陽花が美しく、夕闇を舞う蛍が夏の風情を運びます。

[2021/6/21~7/6]

東山が雨にけむり、梅雨まっただ中。630日、京都各地の神社では夏越祓(なごしのはらえ)を行い、残る半年の無病息災を祈願します。

[2021/7/7~7/21]

疫病や災厄の退散を祈願して平安時代に始まったとされる祇園祭。おごそかに神事が行われ、京都の厳しい暑さは盛りを迎えます。

[2021/7/22~8/6]

三方を山に囲まれ、夏の暑さが厳しい京都盆地。鴨川の飛び石に子供たちの歓声が響き、堤防に草いきれが立ち込めます。

[2021/8/7~8/22]

盆地特有の残暑が続く日々。おしょらいさんをお迎えし、五山の送り火が終わると、ようやく秋の気配が漂いはじめます。

[2021/8/23~9/6]

ようやく暑さが少し和らぎ、虫の音も聞こえはじめる頃。8月下旬の京都では町内の路地で地蔵盆が繰り広げられます。

[2021/9/7~9/22]

草花に朝露が白く光り、虫の声が夕暮れをつつむ頃。京都の各所で秋の名月を愛でる風雅な祭事が行われます。

[2021/9/23~10/7]

ひんやりと頬をなでる風、どこからか漂ってくる金木犀の香り。秋分を境に日が短くなり、秋の夜長の始まりです。

[2021/10/8~10/22]

朝夕は肌寒く草木に露が降りる頃。天高く澄みわたり、遠く比叡山や愛宕山の姿も冴え、夜空には月がくっきりと輝きます。

[2021/10/23~11/6]

露は霜へと変わり、風は冷たく、いちだんと秋が深まる頃。秋の特別拝観や秋祭りで京都の街はにぎわいを増します。

[2021/11/7~11/21]

暦の上では冬が始まり、火の温もりが恋しくなる頃。京都は至るところで紅葉が広がり、美しい緋色に染まります。

[2021/11/22~12/6]

街に落葉が舞い、北山に初雪が舞い始める時期。南座に顔見世のまねきが上がると、いよいよ京都の町は師走の様相に。

[2021/12/7~12/21]

京都盆地に比叡おろしが吹き、大根焚きの湯気が上がり、パタパタと煤払いの音が聞こえると、正月準備を始める頃です。

[2021/12/22~2022/1/4]

一陽来復とも称される冬至。新年がよい年となるよう願い、しめ縄や松を飾り、鏡餅を供え、歳神さまを迎える準備をします。

[2022/1/5~1/19]

寒の入りといわれ、京都の底冷えが身にしみる時期。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも落ち着いてきます。

[2022/1/20~2/3]

二十四節気の締めくくり。一年の邪気を祓い、心新たに春を迎えるために、各地の寺社で節分行事が営まれます。

番外編

[〜番外編~]

祭礼や年中行事などの日をハレ(晴)、普段の日をケ(褻)とし、非日常と日常を使い分ける文化が京都の暮らしに息づいています。

[〜番外編~]

相性のいい旬の食材の組み合わせを出合いもんと言います。季節、食材、人と人、調和を尊ぶ京都らしい美意識がここに。