地域とともに300年の大丸心斎橋店が、
防災と文楽のイベントを開催!
EVENT REPORT
今年、心斎橋の地に開業して300周年を迎える大丸心斎橋店。「ずっと、あきない」というキャッチフレーズのもと、館では年間を通して記念イベントが目白押しです。9月のテーマは「地域とともに」。大阪の街とともに歩んできた大丸心斎橋店が、あらためて地元の文化や魅力を発信するイベントを開催!今回は、9月25日(金)から27日(日)まで3日間にかけて行われた「=防災を文化に=ソナエルストリート」と、9月4日(金)から10月1日(木)まで館内随所で展開された「文楽ひとます座〜大阪の地が生んだ伝統と革新の出会い〜」を紹介。ナビゲーターは、300周年イベントを企画・運営する大丸心斎橋店・営業推進部の八十島和樹です。
江戸時代から町火消しを
支援していた大丸。
まずは大丸心斎橋店本館1階で展示されていた「ソナエルストリート」を訪れました。「地域とともに」というテーマの中で、どうして防災にスポットを当てたのかを八十島に聞いてみました。
「昨今全国各地で自然災害が多く身近なものとなり、明日にも、大阪で大規模な災害が起こる可能性も決してゼロではありません。でも防災は不安や恐怖だけで考えるものではなく、「自分や大切な人を守るための前向きな行動」だと思っています。大丸は江戸時代から町火消しを支援するなど、地域社会とともに歩んできました。その歴史を持つ企業として、今あらためて地域の皆さまのお役に立ちたいという思いから、「ソナエルストリート」を企画しました。
防災を身近で楽しいものとして体験しながら、自然と備えの意識を高めていただく。そんなきっかけになればという思いの企画です。」
大丸は、江戸時代から社訓のひとつに「火の用心第一に念を入れ申すべきこと」を掲げ、火事を恐るべきもの、警戒すべきものとし、町火消しの活動に積極的でした。そのときに着ていたのが、しるし半纏。屋号や家紋を染め抜き、火消したちはこれを誇り高く着用したのです。
「こちらは、江戸時代に火消したちが実際に着ていたしるし半纏です。大丸の商標と、創業家の屋号である下村の文字が入っています」と八十島。
そして、江戸時代の火消しに使われた「龍吐水(りゅうどすい)」も今回特別に展示されました。その役割を八十島が解説してくれます。
「これは、江戸時代に使われていたもので、水を入れた木製の箱の上にポンプがついていて、レバーを上下させることで中の水を押し出して消火していたそうです。とはいえ、今の消防ホースほど水を遠くに飛ばせるわけではなかったので、江戸時代の消火方法は、水で消すというより延焼を防ぐやり方。火がついた家からさらに燃え移らないように、周りの家を先に壊していたのです。なので鳶職の方が火消しをやることが多かったようです」
さらに、八十島はこう続けます。
「この『龍吐水』は嘉永5年に大阪で実際に使用していたものを、大阪市消防局さんが保管されていたんです。こういう昔の道具は、各パーツが欠損したりなくなったりすることが多く、これほど保管状態がよく残されているのは珍しいそう。消防局から外に持ち出して公開したのは今回が初めてという貴重なものです」
大丸心斎橋店前の御堂筋の歩道「ほこみち」でも、さまざまな災害を体験できるブースも設けました。
「震度7の地震が体験できる起震車や、視界の悪い煙の中で安全な避難行動が確認できる煙体験テントなどを設置しました。そのほかポンプ車やミニ消防車の展示や、廃棄ホースを利用したキーホルダーづくりなども実施し、楽しみながら災害に備えることを知ってもらえたと思います」と八十島。
防災の活動やイベントに
力を入れる江崎グリコ。
さらに「ソナエルストリート」では、大阪発の製菓会社としておなじみの江崎グリコのコーナーも設置されていました。
「9月のテーマが『地域とともに』だったので、大阪の企業と一緒に何かしたいなと思っていたんです。防災を取り上げることが決まったときにいろいろ調べたら、江崎グリコさんが、すごく熱心に防災の活動、イベントをされていたのでコラボをお願いしたところ、快く受けてくださいました。大阪の企業としてともに防災を盛り上げたいという想いに共感をいただきご参加いただきました」
江崎グリコのコーナーで、「防災」という視点から注目されたのは保存食です。八十島がその大切さを紹介してくれました。
「ビスコは、缶に入れることで5年間味が変わらないんです。非常食として、有事のときでもおいしいものをいただけるのはいいですよね。温めずにそのまま食べられるカレーもあります。被災したとき、わざわざ温めてはいられないですから、これはありがたい。グリコさんですから味にもこだわっていて、おいしさも追求しながら前向きに災害に備えましょうというメッセージが込められています」
大丸心斎橋店の300年の歴史と連動するように、江崎グリコの歴史も展示物から垣間見えました。
「グリコのキャラメルの箱の変遷も展示しています。キャラメルの上のおもちゃが入っている箱が年々大きくなっていますが、中に入るおもちゃがだんだんと豪華になっているからですよね。グリコのキャラメルといえば、キャッチフレーズの『一粒300メートル』が有名ですが、大丸心斎橋店300周年との300つながりもなにか縁があるなあと思いました」
大阪の伝統文化・文楽と
若い力が掛け合わされて。
「ソナエルストリート」に続いて八十島が案内してくれたのは、「文楽ひとます座〜大阪の地が生んだ伝統と革新の出会い〜」です。
「道頓堀で発祥した伝統芸能の文楽、そしてこの4月に大阪文化服装学院から校名を変えた歴史ある服飾専門学校、ヴォートレイル ファッションアカデミー。この大阪が誇る伝統と若い力の2つを掛け合わせました。百貨店っていろんなものを掛け合わせるのも役割のひとつだと思っていて、その結果生まれる新たな価値を提供できたらという想いで企画しました」と八十島。
「あの提灯を見てください」という八十島の言葉に天井を見上げると、3色の提灯が吊り下がっていました。
「国立文楽劇場の定式幕(じょうしきまく)を思わせる三配色のパターンをイメージするとともに、「三位一体」となってこの街を盛り上げる、そんな想いを込めました」
伝統芸能と若い力の掛け合わせで、どのような世界が生み出されるのか?本館4階、5階、6階、8階のエスカレーター前で展開されていた「文楽ひとます座」を八十島に案内してもらいました。まずは本館4階へと向かいます。
「文楽人形の衣裳デザインを、自由な発想で学生さんたちにしてもらいました。それぞれのフロアにテーマがあって、本館4階は『心斎橋の昼と夜』です。各フロア2体の文楽人形を展示しているのですが、それぞれ二面性を表すという共通のテーマを持っています」
ヴォートレイルの学生は、19名が4つのチームに分かれて、それぞれのテーマで衣裳を制作しました。
「『心斎橋の昼』がテーマのこちらは、ラグジュアリーで華やかな表情を見せています。文楽人形のかしら(人形の頭部)のお顔もそれぞれ違うので、学生たちはその印象から、一体一体に名前を付けています。こちらは繋ぐという漢字でケイ。デザインのこだわりポイントは、台座に字幕で流しています」
繋(ケイ)の台座には、“鮮やかなパッチワークに輝くシルバーの反射プリント。それは昼の心斎橋が魅せる「華やぎ」を体現しています”という字幕が流れていました。
本館4階の反対側のエスカレーター前では、心斎橋の夜を表現した「継(ケイ)」が展示されていました。
「昼の顔の『繋(ケイ)』とは色合いが全然違って、より艶やかだと思います。『スター・ウォーズ』のパドメ・アミダラの人物像をヒントにしたということですが、かしらの髪は、国立文楽劇場で実際に鬘の髪を結い整えている床山(とこやま)のスタッフに結ってもらいました」と八十島。
今回、大丸心斎橋店で「文楽ひとます座」を展開するにあたり、国立文楽劇場には多大なる協力を仰ぎ、芝居を支える技術陣も総出で展示の準備をしていただきました。その中でも、とりわけお力添えをいただいたのが、人形遣いとして45年のキャリアを持つ吉田簑一郎先生です。
「衣裳を着付ける『人形拵え』は、文楽の主遣いをされている吉田簑一郎先生にお願いしました。主遣いは、人形遣いの中でもかしらと右手を操るとても重要な役割なんですが、着付けもされるのです。『文楽ひとます座』開催前、簑一郎先生には学生さんへのレクチャーから、前日には館内で夜中までお付き合いいただいて仕上げたのですが、襟の立ち方のちょっとした角度、服のドレープの感じとか、今動かした?というぐらい微妙な作業なんですけど、あとで見てみるとやっぱり違う。『うわー、すごい!』となりました。きっと劇場でもそうやって細かいところにも徹底的にこだわってらっしゃるんだろうなあと感銘を受けました」と八十島は言います。
本館5階のエスカレーター前では、4階の艶やかさとはまた違い、凛々しいかしらの人形と大胆なデザインの衣裳が目を引きました。
「大丸心斎橋店のエレベーターに着想を得て、デニムのパッチワークにロープのような飾り紐をあしらった衣裳になっています。学生たちの自由な発想が面白いですね」と八十島。
反対側のエスカレーターには、エナメル素材にスパンコールの羽織を身に纏った「黒影(こくえい)」が展示されていました。ちょっと現代風な感じもする「黒影」の小道具について、八十島は面白いエピソードを披露してくれました。
「頭に乗せられたサングラス、簑一郎先生が『こんなのもあるけど、どう?』と用意してきてくれました。人形の構造を熟知されているので、どういう見せ方が一番いいのかを知ってらっしゃるんですよね。学生たちといっしょに国立文楽劇場まで行って人形についてのレクチャーを受けたんですが、衣裳を着ていない人形は、かしらの下はほとんど空洞で、基本的には肩を形成する板と腰の部分となる竹の輪が布と紐でつながっているだけ。そこからあたかも命があるかのように肉付けしていくことはとても難しいこと。学生たちの一番の悩みは、どうやったらリアルな体になるのかでしたが、簑一郎先生は、ものすごく熱心にアドバイスをしてくださいました」
本館6階では、表情が外国人のような人形が展示されています。
「数は少ないのですが、文楽では外国の物語を上演することもあり、そのときに使うかしらです」と八十島。
「ヨウキ」と「カイ」と名付けられた2体は、“華やかな百貨店(灯火)、それを支える裏方(灯し手)”の二面性を表現。かしらの表情も相まって、異国のファンタジー感を醸し出す展示となりました。
本館8階では、「兎美」と「亀吉」、2体の人形が並んで展示されていました。
「大丸心斎橋店御堂筋側入口にあるウサギとカメのレリーフをモチーフにしたものです。ウサギのスピードと亀の着実さ、どちらも大事だよねという二面性を表現してくれています。着物とフェザーを掛け合わせたり、伝統的な羽織袴スタイルを現代的に再構築するなど、伝統と革新の融合をうまく表してくれました」と八十島。
そして、今回の「文楽ひとます座」で大好評だったのが、文楽かしらのスタンプです。
「今回展示した8種類の文楽のかしらのオリジナルスタンプを用意しました。海外の方も多いので、パスポート風の台紙を用意し、入出国のスタンプのようなイメージで集めてもらいました」
取材時も、各階でスタンプを押す人が引きも切らないほどで、その人気ぶりを示していました。
大丸心斎橋店300周年イベントも
いよいよクライマックス。
各階の展示をひと通り見たあと、本館5階にある「サロン・ド・テ・ヴォーリズ」で八十島にさらに話を聞きました。
「学生の制作期間は約5カ月。授業も忙しく、だいぶしんどかったと思いますけど、よくやってくださいました。文楽人形の衣裳をデザインするなんてなかなかない機会ですし、国立文楽劇場の皆様もこういう試みは初めてということで、たくさんのご無理をお願いしたにもかかわらず、最後まで伴走していただき本当に感謝です」
今回の防災、文楽をはじめ八十島は300周年イベントを、1年を通して企画・運営する担当です。そのバックグラウンドなども聞きました。
「企画の立ち上げは2025年1月ですね。イベントは、1年間のなかでもメリハリをつけようということで、3月、6月、9月、11月に開催していくことにしました。9月は『地域とともに』がテーマ。大丸心斎橋店が300年やってこれたのは地域のみなさまのおかげということを肝に銘じて、未来につながることを地域と一緒にやっていこう。防災、伝統芸能と若い力の融合のほか、大阪産の芋『夢シルク』をアピール(こちらのイベントは次回の「DELIGHT JOURNAL」で紹介予定)していこうと。文楽は300年以上の歴史がありますし、町火消が始まったのも吉宗の享保の改革(1716年〜1745年)の一環、サツマイモが全国に広まったきっかけは享保の大飢饉(1732年)のときと、だいたい300年前。今回の3つのイベントは一見バラバラに見えるけど、歴史的にもリンクしています」
バラエティー豊かに盛り上がった9月の次は、いよいよ300周年イベントの最後を飾る11月がやってきます。どのようなことを企画しているか聞いてみました。
「テーマは、『300回目の誕生日パーティー』。11月1日は大丸心斎橋店の誕生日で、館内をサンバパレードが練り歩く予定です。われわれはホストとしてとことんお客様をおもてなしするので、一緒に楽しんでいただけたらと考えています。10月31日(土)、11月1日(日)と11月21日(土)までの毎週土曜日はFM COCOLOのラジオブースを設けてDJをしたり、大丸前御堂筋歩道にウサギとカメのメリーゴーランドを設置したり、昔ノベルティとして配っていたメリーゴーランドのクラフトを大型にして展示(数量限定でクラフトを復刻販売)したりと、盛りだくさんです」
大丸心斎橋店300周年も11月にいよいよクライマックス!館内でにぎやかにおもてなしをしますので、ぜひ足を運んでください。
※今回掲載の内容は2026年10月28日現在の情報を掲載しています。
写真/岡本佳樹 取材・文/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 編集・プロデュース/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
300th ANNIVERSARY
開業300周年特設サイト
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300th ANNIVERSARY
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